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伊勢の森の常隆寺

2008,,07
             天王の森

          八島陵

             崇道神社

 △左:淡路市仁井の「天王の森」(早良親王が当初、埋葬されたとされる場所) 
  淡路国の史跡より
  △中:奈良の崇道天皇八島陵(後に埋葬しなおされた御陵。こちらのほうが有名)
   奈良の陵墓:崇道天皇(早良親王)八嶋陵 その1「とんでもとらべる」より
   △右:京都の崇道神社(早良親王を祭神として祀る。いわゆる御霊神社のはしり)
    崇道神社より


 淡路三山のひとつ、伊勢の森の頂上として知られる常隆寺山(515m)へは、妻の提案で出向くこととなった。
 おおざっぱな方向感覚としては、北淡を東西に横切る「太陽の道」(前々回参照)の途上に、この伊勢の森も位置するとされている。播磨灘(瀬戸内)側から順に並べると、舟木石上、伊勢の森(常隆寺山)、そして大阪湾側の伊勢久留麻神社。……が、実際は北緯34度32分にあるのは舟木石上だけで、狭い島の中でこの三点を結ぶと、どう見ても直線にはならず三角形になってしまう。
 実は、妻も私も、この時点で「太陽の道」のことは全く意識しておらず、気の向くままの道程だった。踏破するつもりならもっと綿密に調べ、気合いをこめて行ったのだが、そこまでの執着はなかったので、ガイドブックまかせのハイキング気分だった。

 5月7日
 舟木石神へ行った翌日、東京へと帰る最後の日の午前中。
 妻が図書館から借りてきたガイドブックでは、この伊勢の森から妙見山へのハイキング・コースを紹介していて、何となく名前に惹かれて行くことにしていた。なだらかなアップダウンの尾根道を片道1時間半くらいとすると、たいしたこともなさそうに思えるが、淡路の直射日光は想像以上にきつい。場所によっては雑草がジャングルのように生い茂る道、もし全行程を踏破していたらバテバテだっただろう。山岳関係のガイドブックというのは、ここ数年の実地踏査をしていない人間が楽観的なことを書いていることも多いので、よほど注意しないといけない。

 常隆寺山へは、車で乗りつけることができる。標識を見落とさずにいけば、幹線道路から脇道へと分岐し、くねくねと曲芸のようなハンドル捌きで登っていくと、そのまま寺の境内へ侵入してしまう。常隆寺というお寺があるから、常隆寺山なのだ。
 登りの脇道に入った時に、コンドルのように大きな羽根を広げたカラスが現れ、我々を先導するように低空飛行したのには驚いた。帰りにも、同じ地点で同じようにカラスが低空飛行したので、ここは何かあるなという気になってくる。(単に近くにカラスの巣があっただけかもしれないが)

 駐車場が見当たらないので、境内で掃除をしていたお寺のお婆ちゃんに訪ねると、「ど~こでもいい、広いから」と淡路の人らしいおおらかさで応えてくれた。
 このお婆ちゃんの話し方が、他の淡路の人と違うことに気がついた。淡路も土佐も基本のイントネーションは関西弁っぽいのだが、この常隆寺のお婆ちゃんは、私の母の実家があった東京の調布あたりの古い言い回しを思い出させて、なんだか懐かしいのだ。つまり、私のお婆ちゃんとか、「猫のおばちゃん」と呼ばれていた伯母などの、自分自身にも語り聞かせるような独特のイントネーションに似ている。
 ちょっと文章では表現不能だが、東京(≒江戸、武蔵野、多摩)に方言がないという先入観は嘘っぱちで、ちょっとばかり“濃い”世界もあるのだ。録音しておかなかったのが残念な気もする。
 妻に気がついたか聞いてみたら、全くわからないとのこと。育ちの中でインプットされたものへの感度とは、それほど微妙なものなのだろうか。
 同じ淡路でも、特定の区域では何か異質の文化が入りこんでいることも考えられる。代々の島の人間なのか、お婆ちゃんに訪ねてみたい衝動にかられたが、耳が遠そうで、話がややこしくなると面倒なのでやめておいた。

(1)常隆寺

 なかなか由緒ある寺らしいが、人口も少なく、里人も足を運びにくそうな山の中、よくこれだけ維持しているものだと感心してしまう。神社などは無人で放置されているところも見受けたので、このへんでは寺のほうが伝統的に根づいているのだろうか。

          (2)御朱印集            
 淡路には何種類もの霊場巡りがあるようだが、その代表的なもの、淡路三十三観音霊場の御朱印集らしきものが、お堂の外壁の上のほうにかかっていた。(ちょっと数が合わないかな?)
⇒淡路三十三観音霊場

(3)常隆寺縁起
 寺の由緒書きを見ると、怨霊の祟り鎮めに半生を費やした桓武天皇の、京の都とのただならぬ因縁が浮かび上がってくる。
 皇位継承紛争にまつわる嫌疑で島流しにされる途上、抗議の絶食をして憤死した早良(さわら)親王の菩提を弔った寺が、どうやらこの常隆寺らしいのだ。その後、陰陽師によって早良親王の祟りを告げられた桓武天皇は、深く悔いて、淡路にある親王の墓に何度も勅使や僧侶を送りこみ、参拝・供養させ、「祟道(すどう)天皇」の尊号まで追贈している。と同時に、陰陽師集団を抱え込み、怨霊対策の平安遷都を開始する。
⇒早良親王の怨念と遷都

 平将門よりも菅原道真よりも以前、怨霊の先駆けとして猛威をふるった、その祟道天皇=早良親王の王墓が、この淡路の伊勢の森付近にあるということなのだ。(王墓は常隆寺とはまた別の場所だが、近くにあるらしい。その後、遺骸は掘り返されて奈良へ運ばれたともいう)
⇒早春の淡路島をゆく 常隆寺・早良親王墓
⇒奈良の陵墓:崇道天皇(早良親王)八嶋陵 その1「とんでもとらべる」

 ということは、このあたりには早良親王を慕う遺族や、祟りを鎮めるための桓武天皇の使いが移住してきて、代々、寺や王墓を守ってきた、ということにならないだろうか。その一族と私の母方の方言が似ているとしたら、突拍子のない話だが。まあ、アンチ天孫権力の「鬼の家系」ではあるので、通じる部分はあったのかもしれない。
 そう言えば、平将門シリーズをやった時、桓武平氏(桓武天皇の子孫の武家)に親近感を持ち始めたのも、このへんと絡んできそうだ。それは桓武天皇と言うよりも、弟の早良親王の遺志が引き寄せ、織り上げた歴史ストーリーなのかもしれない。

 これは正真正銘、ここで初めて知ったことだ。つまり、この日記を書くために調べものをしなければ、気がつかないまま通り過ぎてしまっただろう。
 今、熟読できなくとも後でチェックできるよう、関連サイトをメモしておく。
⇒京都まにあ/早良親王
⇒【よろパラ ~文学歴史の10~ 萬葉人物列伝『早良親王』】
⇒抹殺された早良親王の功績

(4)鳥居  (5)神変大菩薩像 
 本堂内部の左奥に、神変大菩薩(役行者)のえらく古そうな木造が祀ってあり、外からでも拝めるようになっている。(これは望遠で撮ったもの)               
 その本堂の外側、すぐ左奥に石の鳥居があり、曰くありげな上り階段が続いている。寺の境内の、しかもこういう位置に鳥居があるのは、とても珍しい。登ってみたが、奥の院というには少し淋しい、小さな石の祠があるだけだった。そこが伊勢の森の頂上と言うことらしい。
⇒常隆寺山
 それにしても、この一帯を「伊勢の森」と呼ぶようになったのはいつ頃からで、どういういわれなのだろう。そして、この地に早良親王の王墓が引き寄せられたのも、何かの因縁だろうか。

          (6)石碑
         
 境内に並んで立っていた石碑。「淡路巡遷弁財天奉○碑」「大峰山五十○記念碑」と読める。(○のところ、解読不能)
 真言宗の寺だが、弁天や大峰山が出てくるところを見ると、修験道とも縁が深そうだ。ということは、古神道とも地下水脈がつながっていることになり、どことなく反体制の香りがする。そちら側の力をも借りなくては鎮まらないくらい、強力な怨霊パワーを感じさせたのだろう。

(7)トリック・アート
↑これはちょっとばかりイタズラ心がおきて撮ったトリック・アート写真。六地蔵の上に、妖精のように小人化したMy奥さんが立っているように見えないかな? 遠近法のトリック。

 ここに車を停めて妙見山へ登りたいのだと、寺のお婆ちゃんに申し出たら、だったら車で入れるところまで入って、そこから歩いたほうがいいと薦められた。細い道だがすれ違う車などいないから大丈夫、と太鼓判を押す。半信半疑だったが、あまりにも自信たっぷりなので、教えられた道へと車を進めてみた。
 とてもハイキング・コースとは思えない薄暗い廃道のような裏道だったが、なるほどかなりのところまで車で行ける。ここをすべて歩くのは、ちょっと気が滅入るかもしれない。
 だんだん雑草のジャングルの中のような、むさ苦しい狭い道になってきて、大きな鉄塔のところまで来たら、さすがにそれ以上進むのをためらう光景になった。昨年の枯れ草がまだ萎れずに密生し、両側からその草薮が覆いかぶさる中、車の轍(わだち)だけは続いている。軽のSUVだったら行けるかもしれないが、2000CCのエクストレイルではこのへんでギヴアップだろう。
 車を停めて、先を偵察しに妻が歩いていく。臆病者の妻がめずらしく一人でずんずん行ってしまうので、私も後に続いた。ところが、カメラを車に置いてきたのと、キーをかけていなかったのを思い出して、急いで走って戻った。一声かけてから戻ればよかったのだが、いきなり私の姿が消えたのにビビッた妻も、驚くほど早く戻ってしまった。
 そこからまた再出発する気力も湧かず、その先の妙見山は断念。ワクワクするような予感も失せていたので、今来たもの寂しい道を引き返したのだった。
 我々の秘教探索旅行は、期せずしてこういう小アドベンチャーになってしまうことが多い。

 正規の車道に戻ると、やけに広々としてすっきりと感じる。あたりは民家も少なく、田園風景にしても独特の雰囲気が漂っていたが、後で考えてみると親王の王墓がどこかに見えていたような気もする。

 そして島の東へと横断。大阪湾側の伊勢久留麻神社へと向かう。

(つづく)

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モリ@久留麻
常隆寺山は元来は栗村山と言われます。
常隆寺の山号も栗村山常隆寺。
我々は「ジョウレッサン」と呼んでいます。

伊勢の森は淡路島北部の津名丘陵地全体の別称です。地質学上は六甲山系と同じ。

ご本尊は行基上人さまが栗の大木から手彫りの千手観世音菩薩。(この時の兄弟仏が先山。他にも)
また、神道式から仏教式に変わりはしましたが、原初の祖霊信仰が今尚息づいている山。
津名(現在の淡路市)地域の祖霊が寄り付く霊山。
現在の洲本市は先山千光寺に同様にお詣り。(同緯度の伊勢には遥宮、滝原宮。)
南あわじ市(旧三原郡)は南辺寺山。概ね伊勢側には遥宮、伊雑宮。
故人の没後の決まった日にちにはこちらで必ず法要と
持ち寄った団子を斜面に後ろ向きで放り投げるなどの施餓鬼会を行います。


ここも伊勢と因縁浅からぬ所。
同緯度の伊勢には二見浦の夫婦岩と、行基上人さま開基、有縁の興玉神社。
栗村と久留麻の語呂が似ているのも何かのロジックかも知れません。
伊勢久留麻神社はここの里宮、遙拝所なのかも知れません。

西に転じれば同緯度には岡山県児島半島の瑜伽大権現(神仏分離の煽りで神社と寺に分離して未だに争っています。)が行基上人さま有縁とのこと。

日本古代史上重要な発見が有りました。
常隆寺山の西山腹の黒谷にはどえらいモノが隠されて居ました。
一世紀~三世紀にかけて倭国大乱とされたこの時期。ここには古代日本で最大級の鉄器工廠が有りました
なんと、海運を利用して材料を搬入して製鉄から最終製品仕上げまで一手に行い此処より各地に供給していたことが判明。
=垣内(カイト)遺跡

近畿一円から出土する鉄器類の生産拠点を隈無く探してもいままで全く出てこないので大変不思議とされていましたが、
こんな辺鄙な山あいに一目を憚るように一大コンビナートが隠されていました。
数年前に発見発掘調査されて大変話題になり現在はプチ遺跡公園として公開。

国生み伝説が俄然真実味を帯びてきます。



2010.08.25 14:11

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2008.10.23 『“その後”の黄泉比良坂の歌 ~ 私の「鬼束ちひろ」評 ~ 』http://seirios2772.blog115.fc2.com/blog-entry-13.html より。

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