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ホラーの名刹、大中寺 ~ 北関東に埋没する古代霊場② ~

2007,,08
 10月8(「大平山神社、開かずの奥の院の謎」 の続き)

 大平山奥宮の富士浅間神社から「ぐみの木峠」を経て、さらに尾根づたいに西へ進むと晃石山(419m)の晃石(てるいし)神社がある。
          晃石神社
 
 一見、昔ながらの鎮守様のようなたたずまいだが、これは晃石太郎という人霊を祀ったものであり、由来を調べると、どう見ても祟り鎮めのためのものだ。

 いくつか異説があって定かでないが、地方豪族の小競り合い(時代不詳)という説と、戦国末期の小田原北条氏滅亡にまつわる、地方の家臣の悲劇という説があるらしい。
⇒http://www.geocities.co.jp/SilkRoad-Ocean/1808/daityuu.htm 大中寺の悲話
いずれもこの山の中腹にある大中寺にまつわる因縁話で、佐竹小太郎という武士の悲憤の最期を伝えている。この佐竹小太郎が晃石太郎と呼ばれるようになるいきさつは、なかなか迫力のあるホラー話なので引用する。

 古河の郷士である佐竹太郎信綱は、小山家と争って戦で敗れ、縁家である大中寺の住職を頼って落ち延びた。しかし、大中寺は小山家の建立菩提院の関係上、助けることはできなかったので、佐竹太郎信綱は馬の首を井戸に投げ入れ、恨みのまま自害した。

 その数日後、この場所から光輝くものが西方の山の上に飛び散る。村人たちが、光った場所を見ると、ひとつの怪石が現れた。村人たちは、その石を西方の山頂へ移し、「照石権現」としてその霊を祀った。そしてその山を「照石山」、故太郎信綱を「照石太郎」と呼ぶようになった。


 「石」に祟りが象徴されるあたりは、古代先住民の巨石信仰を思わせるが、佐竹小太郎は古代部族の血をひいていたか、または前世がそっち系だったのかもしれない。
 ところで、佐竹小太郎の「佐竹」は、常陸国の那珂を制覇した佐竹氏と関連しているのだろうか。だとしたら、私の御先祖様とも無関係ではない。(本ブログ『「大甕」余話 ~ 戸村氏の興亡 ~』に詳しい)
 あるいは、常陸の古代部族、鹿島一族の流れを汲む那珂戸村氏を滅ぼした因果応報として、今度は滅ぼされる側にまわってしまった佐竹氏の子孫が、佐竹小太郎だったのだろうか。

 「光り輝く」怪石というのは宇宙の隕石の破片も連想させて、どこかSFホラー的でもある。それにしても、その怪石は今、どこに行ってしまったのだろうか。ふつうなら晃石神社の御神体となっているはずだが、どこにも見当たらない。
 もしかすると、禁足地である大平山神社の奥の院にある磐座というのが、実はこの隕石だったのではないか。人体に有害な放射能を発していたため、“祟り”として遠ざけられ封じられた……、などと空想を膨らませるときりがない。

 佐竹小太郎の妻もこの寺の厠で自害したということで、上記HPでは戦国時代編のほうに詳しい。

 小太郎は、隆庸と広照の奥方を無事に正義の屋敷に送り届けたが、帰り道に敵兵に見つかってしまった。小太郎は豪の者でもあったから、ひるまず敵と渡り合ったが次第に斬りたてられ、愛馬と共に傷つきながら何とか囲みを脱し、叔父が住職をしている大中寺の門前にたどり着いた。傷の手当てをと思い、扉をたたいた。まだ夜明けまで時間があったが、叔父の住職は門を開かず、「佐竹小太郎とやら、ここは敵も味方もない場所、いかなる者も匿うことはできぬ」と退けてしまった。小太郎はここまでと思い自害しようとしたが、愛馬が鎧の袖をくわえて離さない。小太郎は涙ながらに愛馬の首を斬り落とし、側の井戸に沈めて自身も腹を切った。

 さて、小太郎の妻は森に潜んでいたが、合図が聞こえないため大中寺に忍んで行くと、夫はすでに自害して果てたあとだった。妻が悲しんでいると、見回りの兵が辺りを探索しているのを住職が気づき、あわてて小太郎の妻を厠に隠し、釘を打ってその場をやりすごした。兵が去ったあと、住職は厠を開いたが、小太郎の妻はのどをついて死んでいた。

 それからというもの、厠に女の亡霊が現れたり、寺の周りを駆ける馬のひづめの音、明け方に門をたたく音が聞こえたり、井戸に浮かぶ馬の影が見えたりと、奇怪なことが続いた。それはいくら供養をしても消えることは無かった。

 寺の僧も一人、二人と去り、とうとう住職だけとなってしまった。そして、ある真夏の夜に大中寺は炎上してしまう。まるで辺りが昼間のように明るくなってしまうほどの大火事で、それは誰も手のつけられない状態だった。

 焼け跡から住職の遺体が見つかった。固く閉まった門扉のかんぬきにつかまったまま焼け死んでいた。

 村人の話では、「火事の前、寺と東山の裾から相呼応するように火打石をたたく音が聞こえた」という。大中寺の再興は、越前永平寺より来た僧伯堂により成されることとなる。


 小太郎夫妻と馬の祟りが、これほど凄まじいものかと圧倒されるが、あるいは祟りはこの一代だけのものではなく、ずっと前生からの宿業の地に登場人物が引き寄せられるようにして、ドラマが再演されたのではないか、というのが私の想像だ。

 この大中寺は平安時代の当初は真言宗だったが、その後、荒廃していたものが室町時代に再興されてからは曹洞宗となる。荒廃の原因がたび重なる「祟り」と火災だったとしたら、怪談調の因縁話はそれなりに古いことになる。
 再興後、戦国の上杉謙信と北条氏綱が和睦(越相同盟)を結んだ舞台としても知られ、一時は曹洞宗の寺院を統括管理する「関三刹」とまで称された。が、後世では怪談話のほうがインパクトが強かったのか、話に尾ひれがついて(?)むしろ「七不思議」伝説で有名になっているようだ。
⇒http://www.geocities.co.jp/HeartLand-Oak/1385/7-hushigi.html 大中寺の七不思議

 この七不思議の軸となった物語が、先に紹介した佐竹小太郎の悲話であろうことは想像がつくが、そこに江戸時代中期の放浪の文人、上田秋成の筆による「青頭巾」(『雨月物語』のうちの一話)の物語がカバーされることによって、俄然、文学性が増してくる。
 私も今まで知らなかったのだが、恐さとおぞましさと美しさが幻想的に交錯した、一級品のホラーである。下記ホームページに読みやすい現代語版を見つけたので、お暇なかたはぜひ堪能していただきたい。
⇒http://home.att.ne.jp/red/sronin/_koten/0505aozukin.htm 上田秋成『雨月物語』巻之五「青頭巾」より
 
 この寺は今も心霊スポットなどで有名らしいのだが、まだ明るいというのに、静まりかえった境内に人っ子一人見当たらない山寺の情景は、形容しがたいものがある。今は名所旧跡としてだけ保存され、檀家を抱える寺としては機能していないんじゃないだろうか。
 それでいて、御用の方が鳴らすインターホンだけは用意されている。太平山神社のほうへ戻る道を確かめたくて、鳴らしてみたら、奥様らしき落ち着いた声で応答があった。しかし、決して姿を見せようとはしない。これも雰囲気を演出するサービスなのだろうか、などと勘ぐりたくなる。

 暗くなったらさぞ恐いだろうが、この時のMy奥さんは不思議と恐がらず、小太郎の妻の生首が出るという「不開の雪隠」とか、馬のいななきが聞こえるという「馬首の井戸」とか、物珍しげに見学していた。
 あんまりそこいらへんペタペタ触るなよ、因縁霊がくっついて来るとシンドイぞと、気が気じゃなかったが、私自身も基本的に怖がらないほうなのでたちが悪い。間違って成仏させてしまったら、寺のセールスポイントがなくなってしまうから営業妨害だな、……などと馬鹿なことを考えていたりする。
 
 でも、ヘンなものが写っても困るので、写真はあまり撮らなかった。数少ないスナップを、最後に載せておく。
 
               捻れ巨木
 境内の捩れた巨木。何の木だか、ガイドブックでもわからない。 

     参道階段

 広々とした参道並木。ここだけ見ると、怪談の寺とは思えない。

(つづく)
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2008.10.23 『“その後”の黄泉比良坂の歌 ~ 私の「鬼束ちひろ」評 ~ 』http://seirios2772.blog115.fc2.com/blog-entry-13.html より。

☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ mixiから紀行文の部分を移籍したのが、このブログのスタート。 主に神社仏閣、霊場、スピリチュアル、歴史関係の随筆や論稿を、ここに整理していきます。紀行スタイルが多くなると思います。 執筆は後の時点での回想であり、実際に当地におもむいた日時よりは後になりますが、今後、現地探訪の日付けに統一していく予定です。

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